Sunday, September 19, 2010

What is Life? 自己と非自己「救世主兄弟に関する議論の必要性」(その2)

昨日は少し暑かったですね。阪神タイガースは1-0で巨人に勝ち、中日ドラゴンズが負けたために、首位とのゲーム差は1.5に縮まりました。ところで、皆さんは「坂の上の雲」という小説をご存知ですか?明治維新後の日本が、あらゆる近代化を計り、必死に頑張って日露戦争に勝利するまでの歴史を小説にしたものです。NHKでテレビ化もされました。サミぃは小説を全巻大人買いして読みました。すごいですね、これは。物事に真剣である自分は、このお話をとても好きです。DVDも見たいです。レンタルして通してみようかなと考えています。

さて、前回は「免疫」の説明をして、最後に「救世主兄弟」について少し触れました。まずは、復習しましょう。「免疫」とは「自己と非自己」を見分けて、体を外敵から守る仕組みです。この仕組みは体の健康維持に大事である一方で、輸血や移植において、「免疫の型」という難しい問題があるのです。

今回扱っている「救世主兄弟」はNHKスペシャルで放映された(2010.03.28)ことで、当時、サミぃが働いていた会社でも生物学者を中心として、大いに話題となりました(日本人の多くは慎重派でしたが、サミぃは大賛成でした。というか、子どもをもつ親は賛成で、未婚の人は反対という立場でした)。

「救世主兄弟」に関しては、ご存知の方も多くいらっしゃるかも知れませんので、もしかして、「え?今更?」と仰る方もいらっしゃるかも知れませんが、そこは、ご容赦ください。「救世主兄弟」は、前回も少し説明いたしましたが、病気の兄や姉を助けるために、その兄や姉の「免疫に関連する遺伝子型」が同じであることが確認された「受精卵」から誕生した子どものことです。

現在では、嘗て「試験管ベビー」という呼び名で批判(?)されていた「人工授精」による妊娠と出産は、広く世間に認められております。さらに、分子生物学と医学の発展により、病気と遺伝子との関係が次々と明らかになり、さらには2001年にヒトゲノムが解読されたことから、多くの「遺伝子診断ビジネス」が盛んになっております。

そうした遺伝子が原因となっている病気の一つに「白血病」がございます。サミぃは嘗てこの「白血病」を研究していた経験がございますし、二人の子どもがおりますので、そうした問題を抱えたお子様をもつご両親が、骨髄移植を受けるため、あるいはその他の病気を治すために、臓器提供者を求め、こどもに臓器移植を受けさせるために、数億円規模の募金を集め、そして、海外に行って移植を受ける、そうした希望があることを痛いほど理解できます。

そうした広い意味での臓器移植には「免疫の型」と呼ばれる大きな壁がございます。現在では優れた「免疫抑制剤」がございますので、移植した臓器が患者さんに「生着」するまで、なんとか持たせればいい、そんなこともあるようです。しかし、そうした「免疫抑制剤」には、当然のことながら「副作用」があり、そうした薬に頼ることなしに「臓器移植」を受けられた方がいいに決まっています。

さあ、そこで、考えだされたのが、「救世主兄弟」なのです。よく、「免疫の型」という言葉を耳にすることがあるでしょう。詳しくはMHCと呼ばれるものを一般に「免疫の型」と呼んでいます。人は両親から一本ずつこのMHCに関する遺伝子を引き継いでいます。さらにその一本のMHC遺伝子は様々な多様性があるので、二つの組み合わせがぴったり合う「他人」は数万人から数十万人に一人しか存在しないということが言われております。

「臓器移植」に兄弟や親子からの提供がうまくいく可能性があるのは、この「免疫の型」が、ある程度一致する可能性があるからなのです。

もう少し詳しく説明いたしましょう。MHC遺伝子は両親ともに2つずつ持っています。その組み合わせは下の図にあるように4通りです。

白血病のように、血液を作る細胞にMHCとは別な遺伝子の異常(白血病遺伝子)があった場合、白血病の遺伝子に異常がなくて、かつ、MHCの型が一致する骨髄細胞提供者からの移植を受ける必要があるのです。しかし、それは一般の方からは、極めて確率的に低いので、

人工授精を行い、その中で、受精卵のMHCの型を1つ1つ遺伝子検査して、その結果、MHCの型が一致する受精卵を母親の体に戻すと、その子どもは、白血病のお姉さんかお兄さんに対して臓器を提供する際に、「免疫抑制剤なし」が可能になる訳です。

もちろん、このMHCの型が一致していなければ「拒絶反応」が起きるのですから、検査は慎重に行われます。

さて、こうして誕生した「救世主兄弟」は、手術可能な年齢に達した際に、病気のお姉さんかお兄さんに臓器移植をする手術を受けることになります。もちろん、MHCの型は一致しているのですから、拒絶反応は起きませんし、術後の経過も順調のはずです。さあ、こうして病気のお姉さんやお兄さんが助かりました、めでたしめでたし、、、、と行けばいいのですが、果たしてどうでしょうか?

子をもつ親としては、この技術ほど、望ましい方法は無いのでは?と思います(少なくとも他人に迷惑をかけないし、お金も1/10以下で済みます)が、そのために遺伝子を調べて「生まされてきた」子どもの人権はどうなるのでしょうか?

もちろん、今では遺伝子検査など、簡単に出来ます。生物系の学部卒であれば、ほぼ全員が、遺伝子検査を理解していて、操作可能です。ただし、受精卵を扱うのは当然、医師ですから、そこに・・・・・・。

とにかく、この技術は可能性を多く秘めています。原理的に考えれば、救世主兄弟以外にも、救世主孫ということも、原理的には、原理的には可能なはずです。倫理的にはおかしいのですが、こうしたことは、まずは、可能であるかどうかを考え、そして、実験で証明し、そして、倫理的にどうか、そうしたことを考えるべきなのです。

サミぃは、自分ががんにかかったら、その細胞を培養してほしいと考えています。さらに、正常細胞も培養して凍結保存しておいてほしいと考えています。iPS細胞技術と、救世主兄弟の概念を合わせれば、あらゆる可能性を検討することが出来るからです。

ただ、そうしたことをするためには、メカニズム解析を行う基礎研究が大事です。それなしに、出来るからといって、何でもやっていいとは思いません。問題点や、疑問点がなくなった暁にそれらを実施するべきだと考えております。ただ、その一方で、現在病気でお困りの患者さんをどうするのか、そうした問題もございます。

Today, I introduced a technique about "Savior sibling". This technique has a lot of possibility or usability for saving many patients suffering from various disease. However, there are many ethical problems on it. To be established this technique, we have to elucidate the mechanism and validate the safety, and also inform the usability or possibility for all people. The technique will help many parents having child with genetical disease. So, if you can, please discuss about the technique with your friends or family and understand by yourself. OK, today's class is over. Have a nice holiday!

本日の講義は以上です。最後に、出欠をとります。以下のバナーをクリックしたことで「出席」と認めます。


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1 comment:

Thank you!