Thursday, August 19, 2010

What is Life? 生き物とは?その大前提を覆す癌について(その4)



さて、これまでも、このWhat is Life?では、サミぃが講義担当教官として、聴講生の皆様に対して、生き物ってなあに?ということを、出来るだけ難しい言葉を使わずに、説明する努力を、渾身の力を込めて、続けて参りました。

特に、ここ数日の「癌」に関する講義は、生き物とは?というより、命とは何か?とか、人間の尊厳とは何か?あるいは、極端な話をすると、天国とは何か?という流れに向かう可能性を有しております。

私は、宗教学者でもなければ、思想家でも、活動家でもございません。子の親であり、単なる生き物博士です。しかし、どれほどの、言葉を用いたとしても、逸見政孝さんや、忌野清四郎さん、夏目雅子さん、ジョージ・ハリスンさんなど、「癌」で、この世を去ってしまった多くの方々が、当時、どのように、極限まで、現世を生き抜いたのか。治る見込み、すなわち、寿命を全うするまで、健全で生き続けることが、不可能だと、自ら知った際に、残された、愛する人達に、どこまで、ご本人の思いを、残すことが出来たのかは、知る由もございません。

生物学者に限ったことではございませんが、特に、日本では、ライフサイエンス分野で、研究費を国から得るためには、どうしても、「病気」とか、「治療」とか、その「原因探索」などを、目的とした計画書を作成しなければならないという、問題がございます。もちろん、そうした科学研究費は、人類のために使われるべきであるという、大前提の元で、運用されているのですが、「その病気」に罹ったことも無い、若い研究者が、そうした病気の研究を、実感をもたずに行う訳です。

生物学者が、生物のメカニズムに興味がある一方で、医師は、逆に、治療や、診療と言った、医療に目を向けがちです。それはそれで、間違いは無いのだと思うのですが、基礎分野に注目したいけど、「病気」を申請書に組み入れなければならない生物学者と、そもそも、病気の治療に目を向けていて、生物進化や、古生物学など、医療とは、およそ関わりのないことには、興味(はあっても、仕事にはしない)を持たない医師との間には、大きな乖離が存在するのです。

それでも、生物学者は、医者ではないので、血液や、癌組織などの研究材料の提供を、医師にお願いすることになります。前回、述べましたように、癌の基礎知識を、基礎生物学の授業として習う生物学者と、実際に癌患者を目の前にして、その恐ろしさや、治療方法の開発の緊急性を理解している医師との間には、いわゆる「温度差」があるのでございます。

サミぃは、これまでに、多くの医師と共同研究を行って参りました。ですから、この感覚的、且つ根本的な違いに、常に悩んできました。生物学者は研究を仕事にしています。医師は、博士号をとるために短い間だけ研究をする方が多くいらっしゃいます。もちろん、その後も、大学に残り、基礎医学を貫く方も多くいらっしゃいますが、将来の自分のために、生物学的研究方法の習得に情熱をもつ、私たち生物学者と、方法よりも、結果、あるいは、症例報告、学会報告、医学雑誌への論文投稿(博士号取得)を優先する医師(医学生)との間には、価値観の違いがございます。

しかし、それでも、私たちは、生き物であり、人間です。「癌」は現実に多くの人に発生し、多くの人の命を奪い続けている、困難な病気の一つです。サミぃは、もし、自分が「癌」に罹ったら、「告知」をしないでもらいたいと、考えていました。しかし、それは、深く考えた訳でもありませんでした。自らの死期が迫っていると知ることが、怖いと思っていただけでした。

今、ある一冊の本を読み切りました。その本のタイトルをご紹介致します。


この本を読み、いかにこれまで自分が、ろくに知りもしない病気にこじつけて予算申請してきたのかを、痛感致しました。サミぃは、これまでにも、何度か言っておりますように、人間を特別な生き物ではないと考えております。霊魂というものが、仮に有ったとしたら、それは、等しく、全ての生物にあるべきだと考えております。あの世や、天国や、地獄についても同様です。

しかし、そのようなことを、論じる前に、上記の本を読んでみて下さい。少なくとも、健康で暮らせている、今の一日一日が貴重なものであることを理解することが出来るでしょう。

Apple ComputerのCEO, Steve Jobs氏は、過去に膵臓癌に罹り、一度は死を覚悟した人物です。彼は、毎朝、鏡に向かって「今日が人生最後の日だとしたら、本日予定さている会議は、本当に必要なことなのか?」と、自らに問いかけることを日課としているそうです。そう聞けば、彼がどれほど、毎日を充実して、感謝しながら生きていらっしゃるか、想像出来るのではないでしょうか。

講義担当教官のサミぃも、鏡を毎朝見て、それを行っております。先にご紹介した本は、宗教の本ではございません。人間とは何かを書いてある本でございます。どうか、よろしく御願い致します。

あ、すみません、前回予告していた(2)「癌の発生メカニズム」は、今日の講義では扱えませんでしたm(..)m。



本日の講義は以上です。最後に、出欠をとります。以下のバナーをクリックしたことで「出席」と認めます。


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1 comment:

Thank you!