Wednesday, January 16, 2013

What is Life? iPS細胞について(その2)



iPS細胞に関してここ数日テレビや新聞で報道されたことで、多くの方がiPS細胞を開発した山中伸弥先生のお姿をご覧になられたことでしょう。凛々しいお顔に優しい笑顔、そして格好いい眼鏡。私も少しあやかりたいと思っています。

さて、今回はiPS細胞に関しての2回目です。この連続コラムではこの技術がなぜノーベル賞を受賞するほど注目されているのか、或は今後の再生医療にどれだけ貢献する可能性を秘めているかなど、分かりやすく解説したいと思います。

前回はiPS細胞とは何かを説明するために「再生」「分化」「脱分化」「初期化」などの用語に関する解説を行いました。

今回はその続きです。

まず簡単に前回の流れを復習しましょう。体を構成する細胞は様々な部位において、様々な特徴を持っていて、これを「分化」している細胞と呼びます。そして、カエルを使った実験結果から、一度「分化」した細胞の核を卵に移植すると、それまで非常に長い遺伝子DNAの百科事典の中で、その細胞専用の巻を開いていた(分化していた)ものが、一旦全てのページを閉じて(初期化)新しくまたそれぞれのページを開き始めることが分かった訳です。

このことは傷の修復などに見られる「再生」現象に細胞の「脱分化」が関係している可能性を示し、またある特定の条件さえ見つけ出すことが出来れば「分化」した細胞を「初期化」することが可能だということが予想された訳です。

さて、ここでまた別な新しい言葉を持ち出してこなければなりません。それが「幹細胞(かんさいぼう)」と呼ばれるものです。幹細胞と肝臓の細胞(かんさいぼう)は読み方が同じなので混乱することが多いのですが、ご了承ください。

幹細胞と言うのはこれまで述べてきた「再生」現象を説明するための一つのアイデアから発見されたものです。もう少し詳しく説明しましょう。

前回イモリの肢を切断した際に起こる肢の「再生」は「脱分化」によって起こると説明しましたが、それだけでは実は説明がつかないことがあるようなのです。おそらくイモリのような両生類は再生能力がとても高いので、「脱分化」も起きているとは思うのですが、それ以外にも「幹細胞」による「再生」も起きていると考えられています。

「幹細胞」に関しての説明がまだでしたね。これはわりと最近に見つかったもので、体が維持されているメカニズムを実にうまく説明するものなのです。

「幹細胞」というのは体のあちこちに存在している「分化」途中の細胞のことです。どういうことかと言うと、例えば皮膚を考えてみてください。私たちは普通あまり皮膚の「再生」を意識すること無く生活しております。

でも、子どもの頃を思い出してください。今でこそ「紫外線」によるシミ、ソバカス、メラニン色素の沈着などと騒がれていますが、夏休みに海水浴に行ったりすると、真っ黒に日焼けして、その後で皮が剥けましたよね。実はあれは紫外線を大量に浴びたことによる軽い火傷のようなもので、皮膚の下の方に存在する部分で、急いで傷ついた皮膚を再生する活動が起きた結果なのです。

同様に、体のあちこちにはその組織に必要な細胞を作り出す部分があって、そこにいつも新しい細胞を送り出す役目をしている特殊な細胞があるのです。その細胞のことを「幹細胞」というのです。

皮膚と同様に、骨髄にも常に血液細胞を作り出している「造血幹細胞」がいますし、最近では小腸や、肝臓にもそうした「幹細胞」が存在すると言われています。

少し説明が長くなりましたが、そのように「幹細胞」は完全に「分化」していない状態で、細胞分裂をすることで新しい細胞を送り出す役目を持っているのです。

さて、みなさんはきっと、これまでに何度か「ES細胞」という言葉を聞いたことがあるでしょう。iPS細胞関連のニュースでも「ES細胞」という言葉は頻繁に使われていると思います。

この「ES細胞」も実は「幹細胞」の一種なのです。しかし、この「ES細胞」は皮膚や血液を作る幹細胞よりももっとずっとずっと前の段階、つまり受精卵からまだそれぞれの細胞が「分化」していない頃の状態を維持している特別な「幹細胞」なのです。

「分化」の程度を文字で簡単に示すと以下のようになります。

受精卵→ES細胞→→→→→→→皮膚幹細胞→→皮膚細胞

ここではES細胞の作り方やその倫理的問題などはあえて採り上げません。後でまとめて示すからです。

さて、ES細胞とiPS細胞の一番の共通点は、特定の条件を揃えてあげることで、基本的にどんな種類の細胞へも「分化」させることが出来るという点です。ですから、火傷によって皮膚移植が必要になったとき、白内障などで網膜の移植が必要となった時、肝硬変で肝臓移植が必要な時など、どんな細胞にも「分化」させられるES細胞やiPS細胞はそうした問題を解決出来るのではないかと期待されているのです。

少し長くなってきましたので、本日はここまでにします。iPS細胞開発のきっかけはこのES細胞だったのです。次回説明しますが、山中先生はこのES細胞が持つ問題点をなんとかしたいと考えてiPS細胞開発に挑戦なさったのだそうです。

今回の話をまとめます。

「再生」において「脱分化」とともに「幹細胞」の活躍も発見された。
「幹細胞」が体のあちこちにあって、体を維持している。
「ES細胞」はもっと初期段階にある「幹細胞」の一種
「ES細胞」も「iPS細胞」もあらゆる細胞に「分化」させることが可能

次回は「iPS細胞誕生」あたりを解説します。

本日の講義は以上です。最後に、出欠をとります。以下のバナーをクリックしたことで「出席」と認めます。

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