Monday, November 1, 2010

What is Life? ゾウリムシの感情3(Passion in paramecium 3)

みなさまお早うございます。ゾウリムシの感情に関する議論もそろそろ結論が見えてきたようです。多分あと数回だと思います。今の時点で、前回の続きを示します。詳しくはこちらでどうぞ。


その前に一枚の写真を紹介します。近所の公園で見つけたアオキの実です。








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田島鉄也 さんのコメント...
確認したいのですが、貴方は、「シグナル集合体は全て生き物である=「感情」を持つ」というふうに考えを改めたのですか?

前回のレスでは、自ら子孫を増やすことができないものは生き物ではない、とおっしゃっていましたが、今は、その制限を撤廃して、シグナル集合体=生き物=「感情」を持つ というシンプルな考えになったのですか?
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Sammy さんのコメント...
自ら子孫を残すことが出来ないものは生き物ではないというのは、教科書的に学んだもので、これまでの私の考え方の根幹でした。

ですので、癌が生命現象を担っていても、個体でないので、生き物とは呼べないとずっと信じ続けてきました。

しかし、翻って見れば、そこに多細胞生物の生殖によって子孫を残すという生活環が存在するために、敢えて、個体ではない癌組織を生き物ではないと言っていたのです。

まだ自分の確固とした考えがあるかどうかについて不安定なところがあるのは否定しません。田島さんとのこのディスカッションによって、大きく影響された点もございます。

ですが、生き物か生き物でないかは、感情を持つか持たないかの定義とは異なります。癌であっても、そこにはシグナルが存在し、栄養を与えれば生き続けますし、栄養や環境が悪化すれば苦しむはずです。

私はこのディスカッションを通して、少し考えが変わりつつ有ります。それは田島様が皮肉を込めて仰ったT4ファージなどのことが、それでも生き物(個体とは別の意味です)である、すなわちシグナル集合体であると考えたのです。

そうだすると、酵素の楊なものでも電子の授受と言う反応をしているのであって、電気信号を「感覚、感情」といっているのと、何ら違いが無いと考えるようになったのです。

そうだとすると、どこに線を引かれますか?と敢えてお聞きしたいです。猿?犬?キジ?それともバクテリア?ファージ?どこでしょうか。どこから感情が無く、物質と考えられるのでしょうか????
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田島鉄也 さんのコメント...
すみません、問われているので答えなければならないのですが、
さらに疑問を呈するのをお許しいただきたい。

「生き物か生き物でないかは、感情を持つか持たないかの定義とは異なります。」ということは、

a:感情を持つ生物、
b:感情を持たない生物、
c:感情をもつ非生物、
d:感情を持たない非生物


の4つのパターンがあるということです。


aは存在します。dも存在します。


cはたぶん無いでしょう(分かりませんが、ある・ないの議論は今は便宜上やめましょう)


bは、在り得るとお考えですか?


いままでのサミィさんの論調から、生き物=感情を持つ、生き物でない=感情を持たない
ということかと思っていましたが。
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Sammy さんのコメント...
a
b
c
d
a.当然あります。
c. これはありません。
d. 当然あります。
問題は、bです。感情を持たない生物はいません。これが田島様と異なる点なのでしょう。

生き物の定義をここでは教科書的な(自ら子孫を~~)ものではなくて、タンパク質などの酵素まで広げます。
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田島鉄也 さんのコメント...
では、
生き物=感情を持つ、生き物でない=感情を持たない
という関係が成り立ちますね。

話を戻しましょう。
貴方はこう書いています。
-----------------------------------
感情はシグナルの組み合わせから「感じている」と勝手に考えているものである。

しかし、それは石ころとは区別される広い意味での「生きもの」(癌も単細胞も酵素も含まれます)が起こしているシグナルなのです。

よって、感情というものも、実はシグナルの集合に過ぎず、だとすると、感情そのものは幻想であり、感覚というものを複雑なシグナルであると定義することが出来、それを広範囲に適用するならば、シグナル集合体には感情が存在するということになります。
--------------------------
・・・難解な文章ですが、要は、「感情は、シグナルの集合である」ということかと思います。

しかし私の提起している問題は、シグナル伝達という単なる物理現象が、どうして心的現象という内部表象を引き起こすのか、ということです。

貴方は、人間の感情もシグナルの集合である、ということを根拠としているのですが、現在、脳科学で論じられている感情の成り立ちは、サミィさんのいう単細胞生物における「感情」の成り立ちとはずいぶん違うものです。

現代科学が論じている心的現象のなりたちは、私の理解するかぎり以下のとおりです。

脳の中にある無数のニューロンには、パターンをつくる発火のモジュールがあり、それらモジュールの発火が連鎖反応的に起きて、それらの共同や葛藤から個体のその場の行動が決まります。

自我とはエピソード的に記憶をつくる表示板のようなもので感情はいわばそこに描かれる目印であるということです。

これが前野隆司のいう受動意識仮説です。

一方で、デイヴィッド・チャーマーズのように、意識問題はニューロンの発火と関係しているものの、従来の科学とは問題へのアプローチ自体が全く異種の「難しい問題」だ、という人もいます。一種の二元論です。

いずれにせよ脳がなければ感情がない---ということが今の科学では支配的なのですが、貴方は、脳がなくても感情が成り立つ、という新説を提唱するということなので、これは大変なことです。

前に、ゾウリムシに感情があるという根拠を示しえない以上、世界観に訴えるしかない。と申し上げました。

一般の人々に対して、「「ゾウリムシは何も感じていない」という機械的な、殺伐とした自然観よりも、「ゾウリムシは何かを感じている」と考えるほうが、より豊かな自然観をつくることができますよね、皆さん」と訴えて、たくさんの事例を紹介し、状況証拠を固めていくというやりかた。


自説の正しさを証明するというよりは普及して包囲網をつくるということです。

・・・しかし、ニューロン主義に毒されている現代人は、心情的には賛意を示すかもしれませんが、すんなり受け入れるとは思えないですねえ。

貴方の説の最大の弱点は、「シグナル伝達が心の座に成り得る」という一点であって、このことをもっともらしく説明するのは今のところ極めて困難。

しかしサミィさんにとってはこれだけは外すことができない、「世界観の極点」のようなものでしょう。

しかし、「証拠はないけど、とにかくそうなんだ、そう信じてくれ」と言い続けるのも限界があると思う。

やはり、実証的な検討が必要だと思います。

ニューロンがなくても心的活動が成り立つということだとすると、何がニューロンの代わりになるのか?

酵素反応やシグナル伝達分子の連鎖が、ニューロン発火モジュールと同じような働きをするということだろうと思いますがもっと詳しいモデルが必要だと思います。

以下は証拠にはなりませんが、有力な状況証拠をつくるアプローチとして・・・
ゾウリムシの鞭毛運動、代謝、走化性、生殖などの機能を、分子レベルで出来るだけ詳しく記述してみて、その中に、脳のニューロン発火パターンと共通の法則性を発見することができれば、ブレイクスルーが見えてくるのではないでしょうか。

人間の感情を生み出すニューロン発火パターンと、ゾウリムシのシグナル伝達パターンに共通性があるしたら、ゾウリムシに心的表象があることを示唆できると思います。
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Sammy さんのコメント...
なるほど、脳科学は理研の最大のテーマでしたね。現在の脳科学は、脳内のパターン形成(どこが活性化しているかを調べればわかるのでしたね)を詳細に調べているので、単細胞生物とは違う、そう仰りたいのですね。

確かに、それは実証されているでしょう。確か、蝶を見ると一瞬蝶の形に活性化するというのを見たことがあります。

しかし、仮にそうだとしても、根源は同じな訳です。田島さんが、そうした高度な機能によって感情が体系的に脳内で作られていると仰ったとしても、私の考えは変わることはございません。

田島様の主張は大変に説得力が有り、その点(感情は脳が作っているということ)に関しては同意しますし、納得しています。

ですから、私たちとゾウリムシのシグナルの捉え方には違いが有るのだとおっしゃるのですね。良く理解しました。大変分かりやすい内容です。

しかし、ではどこに線を引きますか?これは田島様がお答えになるべき問題です。脳科学が確かな実証に基づいていると言っても、それは調べた対象が主に哺乳類に限られているに過ぎません。

全ての生き物が生活しているのです。感情の根源が電気信号であるのは実証されており、それを作り出すのが、脳だというのは当然です。では、ウニは何も考えずに生活しているのでしょうか。


現時点で証明する努力をしていないだけで、否定するための実証もしていないのですから、そこを争点にするのはいかがかと思われます。

もう一度繰り返します。生き物は物質集合体で、シグナル集合体です。


人を初めとした高等脊椎動物は脳を有していて、その高度なネットワークによって、外界の情報を体系的、集約的に解析し、体を制御しています。


しかし、では、そうした中枢神経系を持たなければ、外界の情報を解析し、体を制御できないかというとそんなことはございません。

ハエの飛行制御機構を研究すると、極めて高度な解析システムを有していることが分かってきました。http://wiredvision.jp/news/200908/2009080623.html

さて、そうしたハエでさえ、フェロモンや視覚によって、結婚相手を捜し、喜びを感じているのです。そうしたことは単細胞でも多細胞でも同様ですし、突き詰めれば酵素でも同じではないでしょうか。


電気信号はなくとも、そこはエネルギーという物理学の領域によって、説明可能な化学反応のエネルギー論的説明があるはずです。

実証されていることと、実証されていないことを比較して、そこに違いが有るという田島様のお考えは生き物博士の私には到底受け入れられません。

宗教ではございません。自然をこの目で真剣に観察してきた一人の生き物博士の思いなのです。



本日の講義は以上です。最後に、出欠をとります。以下のバナーをクリックしたことで「出席」と認めます。(内山さん、見てますか?)

Today's class is over. Have a nice day. Click the button at the bottom of this What is Life?, if you are a student of this class. 




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